女優・タレントの岡江久美子さんが4月23日、コロナウイルス感染による肺炎のため、63歳の若さで亡くなった。
突然の訃報である。岡江さんがコロナウイルスに感染、入院していたこと自体がまったく報じられていなかったため、悲しみと同時に驚きが全国を駆け巡った。
その直後、インターネット上で不審な現象が観測された。「自分は岡江久美子さんの息子だ」と語る顔出しのYouTube動画がアップロードされたのだ。岡江さんに息子はおらず、少し調べればバレてしまう嘘なのだが、同種の投稿が相次いだことで話題になった。YouTuberが著名人やその家族を騙って動画を投稿することに、果たして問題はないのか。今回はこの件に加え、YouTubeにまつわる法律の疑問を確認するため、弁護士と公認会計士の資格を持つ後藤亜由夢先生に話を聞いた。
著名人本人になりすました場合
まずは、YouTuberが「著名人本人になりすました動画」をアップロードし、虚言を述べた場合について考えてみる。誰もが顔を知っているような芸能人、たとえば岡江久美子さん本人になりすますことは難しいが、匿名性が高い漫画家や作家の場合には、これも可能性がない話ではない。
「刑事上問われるおそれのある罪として、YouTuberが著名人本人になりすますことにより、著名人本人の名誉を棄損したといえる場合は『名誉棄損罪』、著名人本人の経済的信用を棄損したといえる場合は『信用棄損罪』が成立する可能性があります。
また、著名人本人から名誉棄損や信用棄損などを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をされるリスクがあります」(後藤弁護士、以下同)
亡くなった著名人への「なりすまし」
ただし、すでに亡くなっている著名人へのなりすまし行為となると、少々事情が異なるようだ。「著名人が死亡している場合は、名誉棄損の対象行為(たとえば、なりすましという形式を採っているが実は誰も知らない秘密の暴露)が真実であれば、名誉棄損罪が成立しません。これは、死者の名誉は虚偽の名誉棄損のみにより行われ、真実の場合はむしろ歴史的事実を明らかにするといえる、という考えに立っているからです」(後藤弁護士)
そもそもなりすまし行為自体がYouTubeの規約に違反しており、その面でも投稿者はリスクを負うことになる。
「なりすまし行為はYouTubeの規約に違反するため、コンテンツが削除されるとともに、あまりにもひどい内容であれば法的にはYouTube(Google社)がYouTuberに対し損害賠償請求をする余地もあるでしょう」
著名人の関係者になりすますリスク
次に、今回岡江久美子さんの死去に絡んで行われたような、著名人の関係者になりすましての投稿について考える。この行為もやはり、罪に問われるケースもあるという。
「著名人の関係者になりすまして名誉や経済的信用を棄損した場合、著名人を被害者とする名誉棄損罪や信用棄損罪が成立します。また、その関係者が実在する場合、関係者自身の名誉や経済的信用を棄損した場合は、関係者を被害者とする名誉棄損罪や信用棄損罪が成立します。
たとえば、『◯◯の親族がYouTubeであんなひどいこと言ってる』ということになれば、その関係者自身の名誉や経済的信用が毀損されているといえるからです」
虚偽の情報をアップロードした場合は?
誹謗中傷や名誉毀損はせずに、ひたすら岡江さんの息子になりすまして話すだけのような動画の場合については……?「法的には問題にならない可能性が高いです。岡江さんの息子さんが実在して、かつ芸能人などの著名人であれば、なりすまされたことによる損害はあるやもしれませんが、息子さんがそもそも存在しないようなので、法的な問題は発生しないでしょう。
ただ、それによりYouTubeで収益を得ていたり、あるいは例えば視聴者から同情などによる何らかの金銭を得ていた場合は、Googleや視聴者を被害者とする詐欺罪の成立や、不当利得返還請求を受ける可能性もあるかもしれません。しかしこのようなケースで法的な責任を問われる可能性は低いと思います」
「幇助」「教唆」も罪になる
ところで、「岡江久美子さんの息子」が続出する様子に不自然なものを感じたのは、筆者だけではないだろう。「息子」を騙る動画を何件か実際に見たが、正直なところ、顔出しで演じる投稿者の様子からは「不謹慎ないたずらを好む人柄」という印象は受けなかった。
そうなると疑われるのは、「YouTubeで成功する方法」みたいなことを謳う情報商材屋が裏にいて、参加者に対して「岡江久美子さんの息子を演じてアクセス数を稼げ」とそそのかしたケースである。
そのような業者がもし実際に存在した場合、いわば“黒幕”である彼らが罪に問われることはあるのだろうか。
「駆け出しYouTuberに対し、名誉棄損罪や信用棄損罪を『幇助(ほうじょ・助ける)』した罪や『教唆(きょうさ・そそのかす)』した罪に問われる可能性があります。
また、業者自身がむしろ主導的になりすましを実行させていたり、なりすましにより獲得した利益の大半を享受しているような場合は、悪質性から名誉棄損罪や信用棄損罪の共同正犯(いわゆる共犯)として責任を問われる可能性があります」
こんな投稿も問題に
著名人に「なりすまし」ているかによらず、虚偽の情報をYouTubeにアップロードした場合はさまざまな法的リスクが伴う。「発信者がその情報が虚偽とわかった上でYouTubeに流した場合、やはり特定個人の名誉を棄損した場合は名誉棄損罪、特定個人の経済的信用を棄損した場合は信用棄損罪となります。
同時に、その虚偽の情報により他人の業務を妨害した場合は、偽計業務妨害罪として処罰の対象になります。たとえば、『あるコンビニで弁当を買ったらゴキブリが入っていた』などの虚偽の情報をYouTubeで配信した場合、当該コンビニを展開する会社の『業務』を、虚偽の配信を通じて『偽計』妨害しているといえるため、偽計業務妨害罪が成立します。
また、民事上もコンビニを展開する会社から損賠賠償請求をされる可能性があります」(後藤弁護士)
YouTuber界隈では、ともすれば“炎上商売”がまかり通っているきらいもあるが、虚実を述べること自体に大きなリスクが伴うことは周知されるべきだろう。
他の「NG例」にはこんなものが……
その他、YouTube運営から放置されていても、実はNGである動画は多い。
たとえば、Webニュースの記事を書き起こしてスクロールさせ、BGMを付けただけの「文字だけ動画」。文字が大きくて見やすいということでこれを好む高齢の視聴者もいるようだが、違法行為となる可能性をはらんでいる。
「ニュース記事を書き起こしただけの動画をアップロードすることは、ニュースの著作権者に対する著作権侵害となり、著作権法違反となるとともに、損害賠償請求の対象になります。
著作権法で認められる『引用』の範疇であれば違法にはなりませんが、『引用』であると判断されるためには、区別性(どこからどこまでが引用であるか明示されていること)と、主従関係(本文に対し、引用される文があくまで従であること)が必要です」
長引く自粛要請の下で、娯楽としての存在感をますます強めているのがYouTubeなどの動画サイトである。そこを“無法地帯”にしないためにも、投稿者にはモラルとリテラシーが求められている。
【ジャンヤー宇都】
「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆"有名人" - Google ニュース
May 15, 2020 at 01:48PM
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YouTubeの「有名人なりすまし動画」は罪になるか?岡江久美子さん死去で急増 - ニコニコニュース
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