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SNSは凶器か救済か──セレブの対処法を例に、向き合い方を考える。 - VOGUE JAPAN

SNSは夜、凶器に変わりやすい。

Photo: Aleksandr Proshkin/123RF

SNSの発達とともに、精神科や心療内科を受診する人数が急激に増えている。日本でも、中傷を規制する議員立法の動きが見え始めてきた。ネット上での攻撃が止まない今、私たち一人ひとりのモラルが本格的に問われる時代となったのだ。

2017年にイギリスのRSPH(王立公衆衛生協会)がYouTube、Instagram、Facebook、Twitter、Snapchatの5つのソーシャルメディアプラットフォームを利用する14歳〜24歳の1,479人に対し、ある調査を行なった。それによると、孤独感を解消したり自己表現の場として捉えられたりするなどポジティブな影響をもたらすのがYouTube、反対に不安感に苛まれたり外見などへの劣等感を持ちやすくなるのが、加工した画像がフィードに流れるInstagramという結果が出た。また、SNS全般において不安感や鬱の増幅や睡眠の質を低下させる危険があるとも指摘している。タバコやアルコールより強い依存性があり、過去25年間で心の健康を害する若者が7割増え、10人に7人はネットいじめを経験しているという。

見知らぬ人が励ましてくれたり、ペットのもらい手がすぐに見つかったり、難病治療のための巨額な支援金がすぐに集まったりと、SNSは人の命や心を救う立派な“救済”ツールの側面もある。しかし同時に匿名性も加わるため、自己開示と自己隠蔽が同時に起きやすくなり、気軽に投げた言葉一つで取り返しのつかない事態へと発展したり、“群”となって相手を追い詰めてしまったりする危険も孕んでいる。

「インターネットは、お互いの顔が見えない“匿名の空間”です。相手の顔が見えないだけに、対面では言えない心の奥までさらけ出す事が出来る場所でもあるのですが、反面一人で黙々とインターネットに書き込みをしていると、だんだん言って良いことと悪いことの区別がつかなくなってエスカレートしてしまう危険性も潜んでいます。さらに、そんな自分を側で止める人もいないとなると、なおさら歯止めが効かなくなる。特に1日の中でその傾向が顕著に現れる時間帯が“夜”。夜にネガティブな書き込みをするのは危険ですね」。こう話すのは、うつ病や睡眠障害を専門に診る、精神科医の古賀良彦先生だ。

何故“夜”なのか。理由は、人間の思考というのは、夜にネガティブに陥りやすい傾向があるからだ。寝る前にSNSを延々とチェックしていたら止まらなくなったり、最初に読んでいた人の投稿からほかの人の投稿へと移動しているうちに、気づくと全く別のところにいる自分を発見し、我に返ったりすることもあるだろう。夜のSNSは、見る側の感情や行動もエスカレートさせてしまうものでもある。

歪んだ正義感から生まれるいじめ。

6年前のアメリカで、1億人と合計10億以上もの投稿を対象に、SNS上での“感情動向”について米IT大手が詳細なリサーチを行った。これによると、投稿者の“感情”は伝染しやすいことが判明した。つまり、ポジティブはポジティブを呼び、ネガティブはよりネガティブを呼ぶということ。特に前者の方が他人の感情に大きく影響するとの結果も判明していることから、大勢の共感が得やすいのも、難病救済のための資金が集まりやすいのも大半はこれで説明がつく。と同時に、炎上やいじめもSNS場ではあっという間に拡大してしまう、ということも。

「 いじめが始まるきっかけは“歪んだ正義感”であることが多いです。理由はその人の思う正しいモラルに反しているから、仕事のやり方が気に食わないから、面白くないから、見た目……といったそれこそターゲットにされた側からすると『どうしようもない』ことばかりですが、いじめる側は『至極まっとうな理由』だと思っている。そしてひとたびネガティブな集団心理が生まれると延々と拡散され続けるため、ターゲットにされたら逃げ場がなくなってしまうんです。これが学校だったら現場でなんとか解決しようとするパターンが多いのですが、職場の場合はそうはいかない。クリニックに相談に来る社会人の中にはこういう理由で会社を辞めたい、と相談にいらっしゃる方が非常に多いです。特にスマートフォンの普及後は、来院者数が急増したのは確かですね」

Photo: Edward Berthelot/Getty Images

「SNSなんて最初からやらなければいい」「嫌なら見なければいい」「気にしない」「スルースキルを身につけるべき」など、SNSの対処法を巡ってさまざまな意見がある。また、SNSを駆使して人一倍稼ぎ、人一倍目立つ反面、嫉妬や反感を買いやすく、常に攻撃対象になるセレブの場合「言われるのは“有名税”」で済まされる事が多い。しかしそこは人の子、セレブだって見知らぬ誰かのストレスのはけ口にされてしまえば、傷つかないわけもない。毎日大量のネガティブメッセージが送られて来ても、笑顔を絶やさず、イメージを損なわず、かつファンの期待を上回る活躍ができるメンタルを保つことができるのは何故か? そしてもし、自分の身に同じことが起きたら、自分は彼女/彼らのように耐えられるだろうか。有名人相手ならどんな言葉も投げかけていいのだろうか──そんな観点から、次はセレブのSNSとの付き合い方を見ていきたい。

カイリー・ジェンナーの場合───暴言にも負けない! 強気で言い返す。

Photo: Toni Anne Barson/Getty Images

リアリティーショー「Keeping up with The Kardashians」に出演していたから、9歳の頃からずっと世間の目にさらされてきた。「特にルックスのことで執拗な攻撃を受けてきたし、それこそ世界中の人が私を非難してるって感じていたこともある。この瞬間も世界の4百万人以上の人が私のことを見ていると考えると本当に変な気分。多分その半分は私のことを変だとか、おかしいとか思ってるんでしょうね。正直とても悲しいけど。でも、勘違いしないで。そんなアンチも決してひとりぼっちじゃないし、私は皆を愛してる」

17歳のとき、SNSでの誹謗中傷にその心情を英メディアでこのように吐露したカイリー・ジェンナー。つい最近も、かつて『フォーブス』誌から与えられた“世界最年少ビリオネア”の称号を同誌に撤回されるなど、彼女の身辺は常に騒がしい。それだけに、一家の中でも最も攻撃を受けたという彼女は、スーパーモデルの姉、ケンダルと常に比べられるなど、ティーンの頃はSNSいじめとの戦いの連続だったという。

しかし、そんな彼女の対処法に娘ストーミーが産まれたあたりから変化が出ている。ずっと体型を揶揄されてきたカイリーだが、出産直後の「あら、スタイルが随分良くなったじゃない?」とのからかいコメントには「子どもが生まれたのよ」とさらりと受け流しており、スルースキルも手に入れた模様。一方で、「Keeping up with The Kardashiansの最新エピソードを観た人は?」との彼女が問いかけたところ、「期末試験(でそれどころじゃないから)! 黙れ!」との暴言ツイートが。それに対しては、「ツイッター止めて勉強しなよ、ビッチ!」とピシャリ。この返しには「セレブが一般人にあんなこと言っていいの?」「カイリーだって言い返す権利はある」等々、賛否両論のコメントで荒れたものの、“母は強し”。アンチに毅然と立ち向かう姿勢を見せている。また、先日ミネアポリスで起きた白人警官によるアフリカ系男性殺害事件に際し投稿したコメントは、娘がアフリカ系のミックスであることから「どうかストーミーの未来が明るいものでありますように」と母としての想いを公表。瞬く間に山のような共感&反発のコメントが寄せられていた。

クロエ・グレース・モレッツの場合──影響力の大きさをポジティブに活かす。

Photo: Axelle/Bauer-Griffin/Getty Images

カイリー同様幼い頃からスポットライトの中で生きてきたのはクロエ・グレース・モレッツも同じだ。その発言は常に注目を集め、プライベートはメディアの格好の的になる。そんな彼女は、SNSとの付き合い方について、2018年の来日時に『VOGUE JAPAN』のインタビューの際、こう語っている。

「私の影響力は分かっているし、立場も分かっている。だから発信するときはこうあるべき、という人物像を考えて行動してきたつもり。私の意見やスタンスに対して賛否両論もあったり、あげ足を取られたりしたこともあるけど、大した問題ではないと思っている。でも、あまりにも辛辣だと、さすがに精神的が参ってしまうの。特にまだ幼い頃は本当に傷ついてた。だからできるだけ世間の声を見ないようにしてたけど、あまりにもひどいときは家族に相談したわ。そうしたら『自分の声を聞いてくれるのも、自分を信じてくれるのもあなただけ。自分がしていることに100%満足しているならそれで十分じゃない? 他に何を望むの?』って。その通りだと思ったの。自分のしていることに満足していたら、周りの声なんて気にする必要ない」

そんな家族からのアドバイスがきっかけで、攻撃的な言葉に傷つくより、せっかく“有名人”になったのだから自分の立場をもっと素晴らしいことに利用しよういう逆転の発想に至ったのだという。「子どもたちに夢を追いかけることの大切さや、自分を信じることの重要性を説いたり、少なからずポジティブな影響を与えられたら、それが本望だわ」と語ってくれた。以降、彼女はゲイの兄たちの活動を支援するなど、SNSを通じた積極的な社会活動に専念している。

ジジ・ハディッドの場合──穏やかかつ誠実に回答。

恋人のゼイン・マリクとの間に待望の第一子を授かったジジにも、アンチは容赦ない攻撃を加えてくる。かつてその体型がモデルらしくないと言われた彼女は、「甲状腺に異常をきたす橋本病を患っているから」と率直に切り返したことも。その美しい眉を“クレイジーな形”と揶揄されたときも「この眉もナチュラルよ。SNS上で皆私が(眉に)何かしてるって言うけど、それも私が赤ちゃんの頃の写真を見れば変わってないことも分かるわよ。“クレイジーな形の眉”は生まれつきなの」と常にフラットな対応だ。

そしてつい最近も彼女のルックスをやっかんだアンチから整形を疑われ、丸い輪郭と頬に「フィラーを入れている」と言われた際には、このように返している。「みんな私が頰にフィラーを入れていると思ってるのね? それで、私の頰がふっくらしてるって? でも、これは生まれつきなの。特に今は(太ることができない)コレクションシーズンだし。何より、妊娠中だから。この頰を気に入ってるから、フィラーなんて入れる必要ないの」。アンチに対し、常に率直な気持ちで、かつ穏やかに諭すのがジジらしい。

ベラ・ハディッドの場合──“悟り”スタイルで、アンチにも冷静に。

Photo: Gotham/Getty Images

ジジの妹ベラも、その美貌から常にアンチの攻撃に晒されている。「いつも表情が同じ」「笑顔がない」と揶揄されたときは「言われるまで全く気づかなかった。だって撮影ではいつもこういう表情を求められるの。あなたは本当の私を知らないのよね。プライベートの私は違う。生まれたときからいつも笑顔ばかりよ」。そして中でも絶えないのが「リップフィラーを入れているのではないか?」「鼻をいじったのでは?」等々の整形疑惑だ。そんな事実無根の噂に対し、ベラはこう答えている。

「皆私が(美しくて)自信たっぷりでいるように見えるのね。そうだったらどんなにいいか。私は今そうなれるように学んでいるところよ。私が整形しているだの、いじっただのって皆言うけど、私の顔をスキャンすればしていないことが分かるはずよ。唇にフィラーを入れるなんて、考えただけでも恐ろしい。そんなことで顔をめちゃくちゃにしたくないの。皆聞いて。綺麗になるために私は母からスキンケアの重要性を教わった。そして父は私たち姉妹が幼い頃メイクをすることを許さなかった。私はずっと馬術に、ジジはバレーボールに専念していた。だから家族の中では“どう見えるか”ではなく(スポーツの試合を)“どう戦ったか”が重要だったの」。また、親友のケンダルとのツーショットに「二人とも整形」とアンチがコメントすると「あなたが私たちの人間性を知ってくれていたらって思うわ。どうか冷静になって。あなたに神の祝福がありますように」と姉のジジ同様熱くなることなく、どこまでも冷静に返すのはハディッド家の血筋だろう。

エド・シーランの場合──「やめる」という選択肢もある。

Photo: Stu Forster/Getty Images

「ツイッターをやめたんだ。完全にね。皆ネガティブな意見ばかりぶつけてくるからもう読む気にすらならなくなった。たった一つの意地悪いコメントだけで一日中気分が落ち込むんだ。こんなのもうウンザリだよ」と2017年にツイッター終了宣言をしたのはエド・シーランだ。現在も彼のツイッターのプロフィールには「もうこれは使っていません。インスタグラムの@teddysphotosをフォローしてください」との断り書きがあり、彼のSNSを運営しているのは関係者で、イベントや近況などビジネス関連の告知に限られている。

「Shape of you」等のヒット曲に恵まれ、グラミー賞を4回受賞するなど成功を重ねるにつれ「赤毛のピエロ」と見た目を嘲笑する悪意に満ちたコメントが大量に送られてくるようになったという。「なぜこんなに嫌われなければならないのか、(何か誤解されているなら)それを解こうと思ってきたけど」と結局問題解決には至らなかったことを告白。そんな彼をレディー・ガガは、擁護していた。エドのように、SNS上で見知らぬ大勢の人からからのネガティブな“攻撃”を受けることを理不尽だと感じ、自らの心を守るためSNSに見切りをつける事を選ぶセレブもまた多い。

カーラ・デルヴィーニュの場合──信念を貫き、ポジティブマインドをキープ。

Photo: Jeremy Moeller/Getty Images

うつ病に罹患、克服したことを来日時に『VOGUE JAPAN』に語ってくれたカーラ・デルヴィーニュ。動物愛護やLGBTQへのサポートを熱心に行い、ユーモアたっぷりでポジティブな発信が多い彼女は、当初SNS上で何を言われてもなるべく大人しくしていようと思っていたという。しかしR.ケリーの性的虐待・暴行疑惑を巡る自らの発言をきっかけに大量のフォロワーを失ったり、攻撃を受けるようになったりしたため、「もう黙っていない。後ろ向きでフォロワーはバイバイ! これからはポジティブに対決する」と宣言。最近も別れたパートナーを擁護するためにSNSを通じて積極的に彼女への攻撃をやめるよう呼びかけるなど、自らの意見を率直に伝えるためSNSを駆使している。

「アンチは、ただ捻り潰すのみ!なんていうのは冗談(笑)。いちいち発言のあげ足を取るからネットの中傷ってすごく辛辣。でもね、実はそういうことをする人たちはたいてい自己肯定感が低かったり、精神的に不安定だったりするもの。だから一番の問題解決策は、常に“自分が”ハッピーでいることしかないと思う。だってもし自分がハッピーだったら、他人がどうであろうと全く気にならないと思わない? 人に嫌がらせをすることは、ある意味自分自身を傷つけることでもあるのに。満たされていないと人の嫌なところはすぐに目に付くものだから、ダークサイドじゃなくもっと光の方向に目を向けて」。攻撃的な相手の人格を冷静に分析し、かつ全員の幸せを祈りながらポジティブな方向へ導こうとするライトワーカー的な姿勢がカーラ流だ。

Text: Masami Yokoyama Editor: Rieko Kosai

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June 03, 2020 at 05:30PM
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