東京女子医大病院(東京都新宿区)で2014年2月、鎮静剤「プロポフォール」を投与された男児(当時2歳)が死亡した事故で、警視庁は、同病院中央集中治療部(当時)の元副運営部長(60)ら麻酔科医の男6人を業務上過失致死容疑で21日に東京地検に書類送検する方針を固めた。長時間に及ぶ投与で重い副作用が出る可能性を認識できたのに、投与開始後の安全管理を怠ったと判断した。
捜査関係者によると、6人は14年2月18~21日の約70時間にわたり、集中治療室(ICU)で男児にプロポフォールを点滴投与し、心電図の異常や尿の減少などの容体変化があったにもかかわらず適切な処置を怠り、プロポフォールの副作用に伴う急性循環不全で21日夜に死亡させた疑い。
男児は同18日、首にできた良性の腫瘍に薬剤を注入するなどの約7分間の手術を受け、ICUで人工呼吸器を付けて経過観察中だった。痛みなどで体を動かすと人工呼吸器が外れる恐れがあるとして、元副運営部長がプロポフォールの使用を決め、他の5人が容体の管理などを担当していた。
プロポフォールは、使用上の注意をまとめた添付文書で、ICUで人工呼吸中の小児患者への投与が「禁忌」とされていたが、法的な拘束力はなく、医師の裁量に任されていた。文献などでは投与開始から48時間を超えると副作用のリスクが高まるとされ、男児への投与量は成人の許容量の約2・7倍に達していた。
同病院の事故調査委員会は15年2月にまとめた報告書で、プロポフォールの長時間・大量投与による副作用が直接の死因と結論付け、医師団の用法・用量への認識が不十分だったなどと指摘。厚生労働省は同年、同病院について、高度な医療を担う「特定機能病院」の承認を取り消した。警視庁は、病院側から届けを受けて捜査していた。
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