Search

何としても自殺の増加を食い止めなければ!【怒れるガバナンス】 - 時事通信

作家・江上 剛

 わが国でコロナ禍が大きな問題になった最初の頃、私は、ある民放テレビ局に出演して、番組の最後に自殺についてコメントさせていただいた。

 番組でのテーマは、コロナ禍で日本経済、世界経済はどうなるかというものだった。

 私の考えは、過去の経済危機を検証すると、危機の最初の年度より、その翌年度、翌々年度にかけて、さらに危機が深くなるというものだった。

 今はそれが的中しないことを祈るばかりだが、その発言をした時、私の脳裏にはバブル崩壊時、自殺者が非常に増加したことが去来した。

 私は、「経済危機の時には、自殺者が増加する懸念がある。せっかく現在、自殺者が減少しているのを、再び増加に転じてはならない。その対策も政府にお願いしたい」と発言した。

 これが杞憂(きゆう)で終わればいいと思ったが、最近、有名女優、俳優の自殺が続いているのは、憂うべき事態だ。有名人の自殺に影響を受けて自殺する人が、どの程度いるのかは分からないが、自殺願望を抱いている人が影響を受けないことを望みたい。

 有名人の自殺報道は、可能な限り控えめが望ましい。1986年に、アイドルだった岡田有希子さんが飛び降り自殺をした。享年18という若さだった。

 自殺報道はセンセーショナルを極めた。その結果、多くの若者が後追い自殺を決行し、「ユッコシンドローム」なる言葉が生まれた。こんなことを二度と繰り返してはならない。

 また、自殺願望のある若い男女をネット上で募り、9人も殺害した忌まわしい事件の裁判が進行中であるが、こうした悪事(殺害まで至らなくても)を考える悪鬼が増える可能性も否定できない。

 政府は、「Go To キャンペーン」に巨額の予算を使っている。コロナでも経済を動かし、旅館や飲食業を支援するのは間接的な自殺対策と言えるが、政府には、自殺者が明らかに増加に転じる前に、直接的な自殺対策を講じることも検討してもらいたい。

 ◆昔は自殺者も少なかった?

 さて、ここで、警察庁と厚生労働省の統計から過去の自殺者の推移を見てみる。

 それによると、日本の自殺者は、1920年代前半までは、1万人を超す年はまれである。それが20年代後半に入ると1万人を超え、その後1万5000人になる年もある。

 これは恐らく、昭和金融恐慌と言われる不況が原因だったのではないだろうか。

 この頃、第1次世界大戦での好景気の反動で、日本は不況に陥っていた。そこに1923年、関東大震災が起き、経済危機に陥る。

 そこからの復興のために乱発された震災手形回収をめぐって、台湾銀行や鈴木商店が破綻する。

 こうした危機を乗り越えようと、浜口雄幸内閣は、金本位制に復帰するべく、デフレ政策を推し進める。経済の足腰を強くすれば、日本は良くなる、と国民も大いに喧伝(けんでん)したと言う。

 ところが、その目論見は、29年に起きたブラックサーズデー(暗黒の木曜日)を契機とする米国ウォール街の株式大暴落の前に、あえなくついえてしまう。昭和恐慌の始まりであり、それは30年、31年にピークを迎え、日本は戦争へと突き進んでしまうのである。

 実際、自殺者は30年に1万3942人(男性8810人、女性5132人)、31年に1万4353人(男性9102人、女性5251人)と、かなりの数に上っている。

 その後も、いったん増大した自殺者数は減少に転じることなく、1万4000人台で推移し、36年に1万5423人(男性9766人、女性5657人)でピークとなる。

 この36年は二・二六事件という軍事クーデターが起きた年であり、長引く不況や戦争への足音に、国民は絶望していたのではないだろうか。

 ◆好景気は自殺者を減らすが

 そして戦後は、徐々に自殺者が増え始める。1万人を超え、私が生まれた54年には2万635人と、2万人を超える。その後も2万人台が続く。

 2万人を切るのは61年だ。

 60年安保などの混乱期を経て、60年に誕生した池田勇人内閣は所得倍増を打ち出し、経済優先政策に転換し、日本は高度成長期に突き進む。この花の60年代は、自殺者が2万人を切っている。やはり好景気は自殺者を減らすのだろう。

 再び2万人を超えるのは77年の2万269人。この年、私は旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に就職した。

 就職難だった記憶がある。73年に第1次オイルショック、79年に第2次オイルショックと続き、企業は採用を絞っていた。旧第一勧業銀行に入行したのは96人だったと思う。その倍以上を採用していた例年とは状況が一変した。

 記憶違いかもしれないが、「大学は出たけれど」という昭和恐慌を背景とした映画のタイトルが、再びマスコミをにぎわしていたように思う。

 そこから自殺者数は2万人を超え続ける。いったん増えた自殺者数は、積極的な対策を講じなければ減少に転じないのかもしれない。

 そして3万人を超えるのは98年である。3万2863人(男性2万3013人、女性9850人)で前年から8472人も増加している。

 この原因はバブル崩壊である。90年にバブルが崩壊したと言われるが、住宅金融専門機関(住専)の不良債権問題に始まり、94年には東京協和信用組合、安全信組が破綻。

 そして、次々に金融機関が破綻し、97年には北海道拓殖銀行、98年には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行なども破綻した。

  ◆【怒れるガバナンス】バックナンバー◆

Let's block ads! (Why?)



"有名人" - Google ニュース
December 08, 2020 at 07:09AM
https://ift.tt/3qMzNXs

何としても自殺の増加を食い止めなければ!【怒れるガバナンス】 - 時事通信
"有名人" - Google ニュース
https://ift.tt/2QiOdyy
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

Bagikan Berita Ini

0 Response to "何としても自殺の増加を食い止めなければ!【怒れるガバナンス】 - 時事通信"

Post a Comment

Powered by Blogger.