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原発避難者4訴訟 最高裁、国の賠償17日判断 「事故がなければおやじは死ななかった」福島・須賀川の農家、樽川和也さん - 東京新聞


トウモロコシを収穫する樽川和也さんは「国と東電の責任が認められるのは当たり前」と話す=福島県須賀川市で

トウモロコシを収穫する樽川和也さんは「国と東電の責任が認められるのは当たり前」と話す=福島県須賀川市で

 トウモロコシの収穫で忙しくする福島県須賀川市の農家樽川和也さん(46)にとって、17日は特別な日となる。1人の原告として加わった東京電力福島第一原発事故を巡る被災者の集団訴訟で、最高裁が国の責任の有無を判断する。11年前の父の死がなければ、起こすことはなかった裁判。「東電とともに国の責任が認められ、双方のトップが事故の被害者にきちんと謝罪してほしい」。当日は収穫作業をしながら、判決を待つ。(片山夏子)

◆人間の造ったものは必ずぼっこれる。福島の百姓はもう終わりだ…

 「おめえに間違った道を継がせたな」。2011年3月23日夜、和也さんは父久志さんが漏らした一言を忘れられない。父との会話はそれが最後だった。

 その日夕方、久志さんが力を入れていたキャベツの出荷停止を告げる県の文書がファクスで届いていた。夕食後、久志さんは珍しく茶わんを洗った。翌朝、暗いうちに寝床を抜け出し、自ら命を絶った。64歳だった。

 11年3月12日に福島第一原発1号機が水素爆発した様子を、久志さんはテレビで食い入るように見ていた。「人間の造ったものは必ずぼっこれる(壊れる)。福島の百姓はもう終わりだ」。よく冗談を言っていた久志さんの口数は減り、朝起きると吐き気を訴えるようになったという。

 ホウレンソウ、カキナ…。放射能汚染で県産野菜の出荷停止は増え、出荷直前だったキャベツ7500個も廃棄を余儀なくされた。久志さんは亡くなる直前に畑を見て回ったのか、携帯の歩数計は680歩を示していた。

 出荷できなくなった畑は黄色の花で埋まり、育ちすぎたキャベツが「バリッバリッ」と音を立てて割れた。和也さんは母美津代さん(72)と、久志さんの日誌を頼りに作業を続けた。「汚染した表土をすき込んでいいのか。出荷できるのか」と、作物の汚染を疑うのは切なかった。

◆11年もたつのに誰も責任を取ってねぇべ

 久志さんが作っていた寒キャベツは地元で評判が良く、直売所ですぐ売り切れ、学校給食にも使われていた。「土1センチ作るのに100年かかる」は久志さんの口癖。「子どもたちに安全でうまい野菜を食べさせるのが、おやじの誇りだった」と和也さんは目を細める。

 久志さんの死は震災関連死と認められ、東電とも和解したが謝罪はなかった。和也さんは「原発事故がなければおやじは死ななかった。11年もたつのに誰も責任を取ってねぇべ。なのになんで国は再稼働しか考えてねぇのか」と憤る。

 美津代さんは、久志さんが亡くなった時の姿を忘れられないと声を震わせる。「黙っていられないと思った。原発事故で放射性物質がまき散らされ、国も東電も責任あるべ」

 和也さんが久志さんの死後に栽培を始めたトウモロコシは甘く、直売所で飛ぶように売れるほど評判になった。裁判が終わったら、父に伝えたいという。「農業を継いだこと、俺に後悔なんてあるはずがねぇよ」

 原発被災者訴訟 東京電力福島第一原発事故後、被災住民らが東電と国に賠償を求めて起こした集団訴訟は約30ある。うち福島、群馬、千葉、愛媛の4訴訟(原告計約3700人)について、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は17日、「国が巨大津波を予見し、東電に対策を講じさせれば事故は防げたか」を判断し、国の賠償責任の有無を判決で示す。この統一判断は他の訴訟に大きな影響を与える。東電の賠償責任は最高裁第2小法廷(同)が3月に東電の上告を退けて確定し、4訴訟の賠償金は計約14億円。

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