岸田文雄首相は14日の記者会見で、参院選の街頭演説中に銃撃され死亡した安倍晋三元首相の政府主導の葬儀について、今秋に「国葬」(国葬儀)の形式で行うことを明らかにした。首相経験者の国葬は昭和42年の吉田茂元首相以来、55年ぶりとなる。首相は国葬とする理由について「憲政史上最長の(通算)8年8カ月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力でわが国のために首相の重責を担った」などと説明した。
首相は、安倍氏の功績について「東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開など大きな実績をさまざまな分野で残され、功績は誠に素晴らしいものがある」と語った。バイデン米大統領ら海外の首脳からも高い評価を受けていることも言及。国内外から幅広く哀悼の声が寄せられていることなどを総合的に勘案したと説明した。
加えて首相は、安倍氏が街頭演説中に銃撃されたことについて「わが国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示していく」と強調。その上で「率直に言って警備体制に問題があった。世界各国の要人警護の在り方なども照らしながら正すべきことは早急に正してもらいたい」と述べた。
今回の国葬の費用は全額国費で賄う見通し。首相は内閣府設置法に基づき、閣議決定を根拠として可能だと説明した。「内閣法制局ともしっかり調整した上で判断している」と述べた。
国葬は戦前、大正15年に公布された国葬令に基づいて実施されてきた。国葬令は戦後の昭和22年に失効したが、吉田氏の場合は生前の功績を考慮して例外的に行われた。それ以降は首相経験者の国葬は一度も行われておらず、最近では内閣と自民党による「合同葬」の形式が主流だった。
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