
岸田首相は26日、東京都内で講演し、新型コロナウイルスの水際対策として停止していた外国人観光客の入国を6月10日から再開すると表明した。まずは感染リスクが低い98か国・地域からの添乗員付きのパッケージツアー客に限定し、段階的に対象を拡大する。観光目的の入国を認めるのは約2年2か月ぶりとなる。
首相は講演で「自由で活発な人の交流は、経済・社会の基盤だ」と指摘し、「今後も感染状況を見ながら、段階的に平時同様の受け入れを目指していく」と強調した。現在は成田や関西など5空港に限定している国際線の受け入れを、新千歳と那覇で6月中に再開する方針も明らかにした。
政府は6月1日から、1日の入国者数の上限を現在の1万人から2万人に引き上げる方針で、観光客もこの枠内に収める。対象の国・地域は、米国や中国、韓国など98か国・地域とする。この国・地域からの日本人帰国者を含めた入国者には、入国時検査や自宅などでの待機は免除する。
観光庁は24日から実証事業を行っており、感染対策などのガイドライン(指針)を策定する。旅行・宿泊業者への周知期間として再開日は10日とした。旅行会社が観光客にマスク着用などの指針を順守させる。公共交通機関の利用も認める。
政府は3月から観光目的以外で外国人の新規入国を認めていた。出入国在留管理庁の統計(速報値)によると、4月には25万9062人が帰国・入国し、このうち日本人帰国者は10万1504人で、外国人留学生が4万6889人、技能実習生が3万7689人だった。外務省は26日、感染症危険情報(4段階)で、米国など36か国・地域を「レベル2」(不要不急の渡航自粛)から「レベル1」(渡航に十分注意)に引き下げた。
岸田首相が約2年ぶりとなる外国人観光客の受け入れ再開を表明した。当面は感染リスクの低い国・地域からの訪日客にとどめるなど、感染拡大防止に目を配った。カギを握る入国者数の管理は、航空会社に国際線の搭乗者数を制限してもらうことで引き続き調節を進める。
「国際交流の再開に向け、大きく前進した。更なる緩和に期待したい」。日本旅行業協会の高橋広行会長は26日、歓迎するコメントを出した。全日本空輸の井上慎一社長も同日、「『日本に来たい』との声をたくさんいただいていたので朗報だ」とのコメントを発表した。コロナ禍で疲弊する観光・運輸業界には追い風となる見通しだ。足元の円安もあり、業界の期待感は高まっている。
入国者数の上限は、国土交通省が全日本空輸や日本航空、日本に就航する海外の航空会社に国際線の予約数を割り当てて管理している。国交省は今月23日、2万人に上限を引き上げる通知を各社に出した。円滑な訪日客再開に向け、引き続き人数管理を徹底する。
国交省は2万人の上限を国内と海外の航空会社に1万人ずつ割り当てる。国内は全日空と日航が1日の平均が5000人以下となるよう予約を受け付けてもらう。海外は過去の運航実績を踏まえて約90社に、平日は1便当たり190人、週末は同160人を上限とすることを求めた。
実際の予約数が守られているかを把握するため、国交省は週2回、約3週間分の予約状況の報告を航空各社に求めている。「これまでに上限を超えた航空会社はない」(国交省担当者)という。
さらに、訪日中の行動を管理できるよう、添乗員付きパッケージツアー客しか認めないこととした。感染状況をにらみながら、更なる緩和を進めていけるかが課題となりそうだ。
観光客の受け入れ再開は10日からだが、観光庁は「ツアーの参加者募集などに一定の時間がかかるため、入国が増えるのは少し後になる」としている。
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